作成者: @fujidig, 作成日: 2019/11/2
Moschovakisの"Descriptive Set Theory" (2009)の1A節のExercisesの解答です.
各コンパクトなポーランド空間$X$について,$C[X]$を$X$から$\R$への連続関数全体の集合とし,次のsup距離を入れる: \[ d(f, g) = \sup \{|f(x) - g(x)| : x \in X\}. \] $C[X]$が完全ポーランド空間なことを示せ.
$X$がコンパクトなので$d(f, g)$は非負実数を定める.また,距離の公理は明らか.
完全性を示す.$f \in C[X], \varepsilon > 0$とすると$f - \varepsilon$と$f$との距離は$\varepsilon$である.よって$f$は孤立点でない.
完備性を示す.$\{f_n\}_{n\in \omega} \subseteq C[X]$をCauchy列とする.すなわち \[ \forall \varepsilon > 0, \exists N \in \omega, \forall n, m \ge N, \forall x \in X, |f_n(x) - f_m(x)| \le \varepsilon. \tag{1}\label{cauchy} \] このとき各$x \in X$について$\{f_n(x)\}_{n\in\omega}$は$\R$のCauchy列.そこで$\R$の完備性よりその極限を$f(x)$とおく. $f_n$が$f$に収束することを示そう.$\varepsilon > 0$とする. \eqref{cauchy}より$N$がとれて, \[ n, m \ge N, x \in X \Rightarrow |f_n(x) - f_m(x)| \le \varepsilon. \] ここで$m \to \infty$として \[ n \ge N, x \in X \Rightarrow |f_n(x) - f(x)| \le \varepsilon. \] よって$f_n \to f (n \to \infty)$となる.これより,$f$は連続関数列の一様収束極限だから連続である.したがって完備性が示せた.
可分性を示す.$X$の可分性より$\{x_n : n \in \omega \}$を$X$の可算稠密集合とする.$d_n: X \to \R$を次で定める. \[ d_n(x) = d(x, x_n). \] 明らかに$d_n \in C[X]$である. $A$を定数関数$1$と$d_n$たちが生成する$C[X]$の部分代数とする.すなわち, \[ A = \{ \sum_{i=0}^N c_i d_{n_{i,1}} \dots d_{n_{i,m_i}} : N\in\omega, c_i \in \R, n_{i,1}, \dots, n_{i,m_i} \in \omega \text{ (for all $i \le N$)} \}. \] $A$は点を分離する,すなわち$x, y \in X$が異なる点なら$p \in A$があって,$p(x) \ne p(y)$となる. よってStone-Weierstrassの定理より$A$は$C[X]$で稠密である. また$A$の元の各項の係数を$\mathbb{Q}$に制限した \[ A_0 = \{ \sum_{i=0}^N c_i d_{n_{i,1}} \dots d_{n_{i,m_i}} : N\in\omega, c_i \in \mathbb{Q}, n_{i,1}, \dots, n_{i,m_i} \in \omega \text{ (for all $i \le N$)} \}. \] を考えると,$A_0$は$A$の中で稠密. よって,$A_0$は$C[X]$の可算稠密集合なので,$C[X]$は可分である. □
参考文献:
各完全なポーランド空間$X$について,$H[X]$を$X$のコンパクトな空でない部分集合全体とする.$x \in X$と$A \in H[X]$に対して \[ d(x, A) = \inf_{y \in A} d(x, y) \] とおく. 二つのコンパクト集合同士のハウスドルフ距離は次で定義される: \[ d(A, B) = \max \{ \sup_{x \in A} d(x, B), \sup_{y \in B} d(y, A) \}. \] これが$H[X]$上の距離であること,そして$H[X]$が完全ポーランド空間なことを示せ.
まず$d(x, A)$の定義であるが,$A$がコンパクトで距離関数は連続なので,$\inf$は実際は$\min$である.
次に$A \in H[X]$を固定したとき,$x \in X$の関数$d(x, A)$は連続なことを言おう. $x, y \in X$とする.$a \in A$に対して, \[ d(x, a) \le d(y, a) + d(x, y) \] であるが両辺の$\min{a \in A}$をとると \[ d(x, A) \le d(y, A) + d(x, y) \] \[ \therefore d(x, A) - d(y, A) \le d(x, y). \] $x, y$を入れ替えても同じことが言えるので \[ |d(x, A) - d(y, A)| \le d(x, y). \] よって$d(x, A)$は連続.これより$d(A, B)$の定義の中の$\sup$は実際は$\max$となり,さらに$d(A, B)$は$0$以上の実数を定めていることが分かる.
距離の公理を確かめる.
$d(A, A) = 0$について: 明らか. //
$d(A, B) = 0 \Rightarrow A = B$について: $d(A, B) = 0$とすると$x \in A$について$d(x, B) = 0$,すなわち$x \in \bar{B} = B$.よって$A \subset B$.$B \subset A$も同様. //
$d(A, C) \le d(A, B) + d(B, C)$について: $d(A, C)$の定義より, \begin{align*} \max_{x\in A} d(x, C) \le d(A, B) + d(B, C) \\ \max_{z\in C} d(z, A) \le d(A, B) + d(B, C) \\ \end{align*} を言えばよい.上の式を示す (下の式も同様). $x \in A$を固定する. \[ d(x, C) \le d(A, B) + d(B, C) \] を言えばよい.
任意の$y \in B$について \begin{align*} d(x, C) &= \min_{z \in C} d(x, z) \\ &\le \min_{z \in C} (d(x, y) + d(y, z)) \\ &= d(x, y) + \min_{z \in C} d(y, z) \\ &= d(x, y) + d(y, C) \\ &\le d(x, y) + d(B, C). \end{align*} $\min_{y \in B}$をとると \begin{align*} d(x, C) &\le d(x, B) + d(B, C) \\ &\le d(A, B) + d(B, C). \end{align*} よって言えた.
可分性を言う. $X$の可分性より可算な稠密集合$D \subset X$をとる. \[ \mathscr{D} = \{ A \subset D \mid \text{$A$は有限集合} \} \] とおく.$\mathscr{D}$は$H[X]$の可算部分集合である. $\mathscr{D}$が$H[X]$内で稠密なことを言う.
$A \in H[X], \varepsilon > 0$としたとき$C \in \mathscr{D}$があって$d(A, C) \lt \varepsilon$を言えばよい. $A$のコンパクト性より$A \subset \bigcup_{k=1}^n B(x_k, \varepsilon / 2)$となる有限個の点$x_1, \dots, x_n \in A$をとれる. $D$の稠密性より各$k = 1, \dots, n$に対して$d(y_k, x_k) \lt \varepsilon / 2$となる$y_k \in D$をとれる. $B = \{ x_1, \dots, x_n \}, C = \{ y_1, \dots, y_n \}$とおく.
$B \subset A$より$\max_{x\in B} d(x, A) = 0$.また,$\max_{x \in A} d(x, B) \lt \varepsilon / 2$.よって,$d(A, B) \lt \varepsilon / 2$. また,$d(B, C) \lt \varepsilon / 2$も言える.よって三角不等式より$d(A, C) \lt \varepsilon$.OK. //
完全性を言う. 可分性の証明より,$X$の有限部分集合全体が$H[X]$で稠密である (これには$X$の可分性は使わない). よって孤立点$A \in H[X]$があったとしたら,それは有限集合である. 孤立点であることより$\varepsilon > 0$がとれて,$B \in H[X], d(A, B) \le \varepsilon \Rightarrow A = B$. $A$が空でない有限集合であることと,$X$の完全性より点$a \in X \setminus A$がとれて,$d(a, A) \lt \varepsilon$. すると$B = A \cup \{a\}$を考えると,これは$A$と異なるが,$A$との距離が$\varepsilon$未満である.矛盾した.よって$H[X]$に孤立点は存在しない. //
完備性を言う. まず,$A \in H[X]$と$\varepsilon > 0$について \[ A + \varepsilon = \{ x \in X : d(x, A) \le \varepsilon \} \] とおく. 次の補題は明らかである.
また,次の補題を用意する.
証明. 各$n_{k-1} \lt n \le n_k$について$y_n \in A_n$で$d(x_{n_k}, A_n) = d(x_{n_k}, y_n)$となるものをとる.すると \[ d(x_{n_k}, y_n) = d(x_{n_k}, A_n) \le d(A_{n_k}, A_n). \] 特に$y_{n_k} = x_{n_k}$である.
$\{y_n\}$がコーシー列なことを示す. $\varepsilon > 0$とする.$\{ x_{n_k} \}$がコーシー列なので$K \in \omega$があり, \[ k, j \ge K \Rightarrow d(x_{n_k}, x_{n_j}) \lt \varepsilon / 3. \] また,$\{A_n\}$が$H[X]$のコーシー列なので,$N \ge n_K$があり, \[ n, m \ge N \Rightarrow d(A_n, A_m) \lt \varepsilon / 3. \] $n, m \ge N$とする. すると$j, k \ge K$があり, \begin{align*} n_{k-1} &\lt n \le n_k, \\ n_{j-1} &\lt m \le n_j. \end{align*} すると \begin{align*} (y_n, y_m) &\le d(y_n, x_{n_k}) + d(x_{n_k}, x_{n_j}) + d(x_{n_j}, y_m) \\ &\le d(A_n, A_{n_k}) + d(x_{n_k}, x_{n_j}) + d(A_{n_j}, A_m) \\ &< \varepsilon / 3 + \varepsilon / 3 + \varepsilon / 3 = \varepsilon. \end{align*} よって$\{y_n\}$はコーシー列. □
証明.
主張.$A$は非空.
$\{A_n\}$がコーシー列なので
$n_1$が存在して$\forall n, m \ge n_1 (d(A_m, A_n) \lt 1/2)$.
$n_2 > n_1$が存在して$\forall n, m \ge n_2 (d(A_m, A_n) \lt 1/4)$.
…
同様のことを繰り返すことで$\{ n_k \}$という自然数の単調増加列がとれて \[ m, n \ge n_k \Rightarrow h(A_m, A_n) \lt 1/2^k. \] $x_{n_1} \in A_{n_1}$を固定. $x_{n_2} \in A_{n_2}$で$d(x_{n_1}, x_{n_2}) = d(x_{n_1}, A_{n_2})$なものを固定. すると \[ d(x_{n_1}, x_{n_2}) = d(x_{n_1}, A_{n_2}) \le d(A_{n_1}, A_{n_2}) \lt 1/2. \] 同様に$x_{n_3} \in A_{n_3}$で \[ d(x_{n_2}, x_{n_3}) = d(x_{n_2}, A_{n_3}) \lt 1/4. \] なものをとれる. 同じことを続けると列$\{x_{n_k}\}$で$x_{n_k} \in A_{n_k} (\forall k)$で \[ d(x_{n_k}, x_{n_{k+1}}) \lt 1/2^k \] なものをとれる.すると$\{x_{n_k}\}$はコーシー列.よってExtension Lemmaより$X$のコーシー列$\{y_n\}$がとれて$\forall n (y_n \in A_n)$かつ$\forall k (y_{n_k} = x_{n_k})$. $X$の完備性より$y = \lim_{n\to\infty} y_n$とする.すると$y \in A$.よって$A \ne \emptyset$. //
主張.$A$は閉集合.
$a$を$A$の集積点とする. すると$A$の点列$\{a_k\}$で$a$に収束するものがとれる. 各$k$について$a_k \in A$より列$\{y_n\}$で$\{y_n\}$は$a_k$に収束し,$\forall n (y_n \in A_n)$なものがある. よって
$n_1$と$x_{n_1} \in A_{n_1}$があり,$d(x_{n_1}, a_1) \lt 1$.
$n_2 > n_1$と$x_{n_2} \in A_{n_2}$があり,$d(x_{n_2}, a_1) \lt 1/2$.
…
同様のことを繰り返して,自然数の単調増加列$\{ n_k \}$と$X$の点列$\{x_{n_k}\}$があって, $\forall k ((x_{n_k}, a_k) \lt 1/k \land x_{n_k} \in A_{n_k})$を満たす. すると \begin{align*} d(x_{n_k}, a) &\le d(x_{n_k}, a_k) + d(a_k, a) \\ &\le 1/k + d(a_k, a) \\ &\to 0\,(k \to \infty). \end{align*} Extension Lemmaより$X$のコーシー列$\{y_n\}$がとれて$\forall n (y_n \in A_n)$かつ$\forall k (y_{n_k} = x_{n_k})$. $X$の完備性より$\{y_n\}$の極限が存在するが,部分列が$a$に収束しているので$\{y_n\}$も$a$に収束する.よって$a \in A$. これで$A$が閉集合なことが示された. // □
証明. $\varepsilon > 0$とする.$N$を$A \subset A_N + \varepsilon / 4$となるようにとる. $A_N$は全有界なので$x_1, \dots, x_q \in A_N$があって, \[ A_N \subset \bigcup_{i=1}^q B(x_i, \varepsilon / 4). \] ここで$x_1, \dots, x_q$を並び替えることで \begin{align*} B(x_i, \varepsilon / 2) \cap A \ne \emptyset & \quad\text{for } 1 \le i \le p \\ B(x_i, \varepsilon / 2) \cap A = \emptyset & \quad\text{for } i \gt p \end{align*} としてよい. $1 \le i \le p$に対して$y_i \in B(x_i, \varepsilon / 2) \cap A$をとる.
今,$A \subset \bigcup_{i=1}^p B(y_i, \varepsilon)$を示す.
$a \in A$とする.すると$a \in A_N + \varepsilon / 4$より$d(a, A_N) \le \varepsilon / 4$. よって$x \in A_N$がとれて \[ d(a, x) = d(a, A_N). \] すると \[ \exists i \in \{1, \dots, q\}, x \in B(x_i, \varepsilon / 4). \] この$i$について$B(x_i, \varepsilon / 2) \cap A \ni a$なので$i \in \{1, \dots, p \}$である. このとき \begin{align*} d(a, x_i) &\le d(a, x) + d(x, x_i) \\ &\le \varepsilon / 4 + \varepsilon / 4 = \varepsilon / 2. \\ d(a, y_i) &\le d(a, x_i) + d(x_i, y_i) \\ &\le \varepsilon / 2 + \varepsilon / 2 = \varepsilon. \end{align*} となる.よって$A \subset \bigcup_{i=1}^p B(y_i, \varepsilon)$が示せた. □
証明. $\{A_n\}$を$H[X]$のコーシー列とする. \[ A = \{ x \in X : \text{$X$の点列$\{x_n\}$が存在して$\lim_{n\to\infty} x_n = x$かつ$\forall n(x_n \in A_n)$} \} \] とおく.$A \in H[X]$と$\{A_n\}$が$A$に収束することを示す.
補題3より$A$は閉かつ非空である.
主張A.$\forall \varepsilon > 0 \exists N \forall n \ge N (A \subset A_n + \varepsilon)$
$\varepsilon > 0$とすると$\{A_n\}$がコーシー列なので$N$がとれて \[ n, m \ge N \Rightarrow d(A_n, A_m) < \varepsilon. \] 補題1より$m \gt n \ge N$のとき$A_m \subset A_n + \varepsilon$となる. $a \in A$と$n \ge N$を固定する. $A$の定義より$\{x_i\}$がとれて$x_i \in A_i$かつ$x_i \to a$. すると$i \ge n$なら$x_i \in A_i \subset A_n + \varepsilon$. $A_n + \varepsilon$は閉集合なので$a \in A_n + \varepsilon$. // (主張A)
主張Aと補題4から,$A$は全有界.よって$A$は全有界かつ完備空間の閉集合なのでコンパクト.ゆえに$A \in H[X]$.
主張B.$A_n \to A\,(n \to \infty)$
$\varepsilon > 0$とする. 示すべきことは \[ \exists N \forall n \ge N (A \subset A_n + \varepsilon \land A_n \subset A + \varepsilon) \] であるが,前者の$A \subset A_n + \varepsilon$は主張Aで証明済みである.よって後者を示す.
$\{A_n\}$がコーシー列なので$N$がとれて \[ m, n \ge N \Rightarrow d(A_m, A_n) \lt \varepsilon / 2. \] $\{A_n\}$がコーシー列なことを繰り返し使うと$N \lt n_1 \lt n_2 \lt n_3 \lt \dots$がとれて \[ m, n \ge n_i \Rightarrow d(A_m, A_n) \lt \varepsilon 2^{-i-1} \] となる.
$n \ge N, y \in A_n$とする.
$A_n \subset A_{n_1} + \varepsilon / 2$より$x_{n_1} \in A_{n_1}$があって$d(y, x_{n+1}) \le \varepsilon / 2$.
$A_{n+1} \subset A_{n_2} + \varepsilon / 4$より$x_{n_2} \in A_{n_2}$があって$d(x_{n+1}, x_{n+2}) \le \varepsilon / 4$.
$A_{n+2} \subset A_{n_3} + \varepsilon / 8$より$x_{n_3} \in A_{n_3}$があって$d(x_{n+2}, x_{n+3}) \le \varepsilon / 8$.
…
この操作を繰り返すと$\{x_{n_i}\}$であって$\forall i (x_{n_i} \in A_{n_i})$かつ$\forall i (d(x_{n_i}, x_{n_{i+1}}) \le \varepsilon 2^{-i-1})$なものを得る. すると$\{x_{n_i}\}$はコーシー列である. そこで$X$の完備性を使い,その極限を$a$とする. Extension Lemmaより$a \in A$が分かる. 加えて,任意の$i$について \begin{align*} d(y, x_{n_i}) &\le d(y, x_{n_1}) + d(x_{n_1}, x_{n_2}) + \dots + d(x_{n_{i-1}}, x_{n_i}) \\ &\le \varepsilon / 2 + \varepsilon / 4 + \dots + \varepsilon / {2^i} \le \varepsilon \end{align*} を得る.$i \to \infty$とすれば$d(x, a) \le \varepsilon$.よって$y \in A+\varepsilon$. これで$A_n \subset A + \varepsilon$が示された. // (主張B) □ (定理)
参考文献: